「特養やら有料やら、いろいろな老人ホームがあるけど、結局金額以外に何が違うの?」
「頑張って調べても同じような内容しか書いてないし……」
こんな方、多くいらっしゃいます。
首都圏の介護付き有料老人ホームで約7年
地方の特別養護老人ホームにて約4年
勤務経験のある筆者が
「実際どうなの?」というポイントを交えながら深掘りしていきます。
なお、今回は分かりやすくするために、終の棲家になることが多い
「特別養護老人ホーム」と「介護付き有料老人ホーム」の比較となります。
「老健」や「住宅型」等には、一切触れませんのでご容赦ください。
結局何が違うの?
で、結局何が違うの?
その答えは
「公的施設」か?「民間施設」か?
これだけです。
これだけなんですが、この差が根本にあるため、実際は大きな違いがあります。
一例を挙げてみましょう。
公的施設は、基本的には倒産することはありませんが
民間施設は、利益を生み出せないと倒産してしまいます。
↓
公的施設の施設長は、経営やマネジメントの知識がなくても運営していくことができますが、
民間施設の施設長は、介護経験+経営の知識が求められます。
☆実際、施設長の危機感や責任感が違いますし、その違いが現場の職員にも影響しています。
公的施設は、国民年金・厚生年金で入居することができますが、
民間施設は、それだけでは入居することはできません。
↓
公的施設は、地価の低い地域に造られることが多いですが、
民間施設は、地価の高い地域や隣接している場所に造られることが多いです。
☆実際、要望・クレームの数は圧倒的に民間施設の方が多いですし、無理難題も言われます。
しかし、その要望・クレームに対し、答えを導き出さなければなりません。
それができないと、他社の施設へ移動してしまい、利益が減ってしまうからです。
公的施設は、空室待ちの待機者数が多くいますが、
民間施設は待機者数はほとんどいません。
↓
公的施設は、必死に営業しなくても入居をとることができますが、
民間施設は他社との競合もあり、必死に営業をかけています。
☆実際、民間の施設長や営業は残業が多く、安定した休みも取れていないことが多いです。
また、特養に入居を拒否された方が、一時的に民間へ入居することもよくあります。
そういった方に、自分達の施設を気に入ってもらうことで、生涯入居に切り替えてもらえるよう、現場の職員も強い責任感で仕事をしています。
これらは、あくまで一例ですが、
実際この危機感や責任感の違いが非常に大きいです。
では、「公的施設」「民間施設」それぞれの違いを比較しながら
メリット・デメリットを改めて書いていきたいと思います。
特別養護老人ホーム(公的施設)と有料老人ホーム(民間施設)の違いは?
・利用料が違う
・従来型、ユニット型による違い
・職員に対する評価の仕方や教育が違う
・仕事に取り組む危機感や責任感が違う
大きく分けるとこのようになります。
ひとつひとつ見ていきましょう。
・利用料が違う
特養…居住費、施設サービス費、食費、日常生活費を合わせて1ヵ月で約10万円です。
(収入により負担割合の差があるので、おおまかな金額です。)
民間…居住費、施設サービス費とは別に入居一時金、食費、日常生活費があります。
(施設やプランによって異なりますが、1ヵ月で20万円以下になることは恐らくないでしょう。)
ですので、特養は公的年金収入だけの方や生活保護を受給している方でも入居することができます。
・従来型、ユニット型による違い。
最近の特養はユニット型が主流ですが、古くから存在する特養は従来型の多床室、トイレや洗面台も共用であることがほとんどです。一方、民間は完全個室のユニット型(もしくはフロア制)が主流で、個室内にトイレ、洗面台を完備していることが多いです。
完全個室型ですと、プライバシーを守ることが容易にできますが、従来型多床室ですと、他の入居者の生活音が聞こえてしまい、プライバシーを保つのが難しいです。加えて、認知症だけで要介護3の認定を受けることができる時代になりつつあるため、完全個室型の需要は今後も増えていくと思われます。
また、従来型の施設は、介護の質も低い傾向があります。時間になったら全員起きる、時間になったら全員横になる、といった個々の状態を意識しない、前時代的な介護を行っているかもしれません。
・職員に対する評価の仕方や教育が違う
特養はいわゆる「年功序列」「終身雇用」の傾向が強いので、その施設に長く在籍している人間が主任やリーダーになっています。一方、民間は人物評価の傾向が強く、仕事のできる人間が主任やリーダーになっています。
また、教育体制にも違いがあり、特養の場合は地方自治体の開催する研修を受けることになりますが、民間の場合は社内研修になるので、より細かい周期で質の高い研修を受けています。
・仕事に取り組む危機感や責任感が違う
特養は基本的に倒産することはありませんし、空室待ちの待機者数も多いためトップの危機感が少ないです。また、実績がなくても在籍していれば立場が上がっていくので、職員の責任感も少ないです。
それに対して、民間は待機者がほとんどいない上に、利益を上げていかないと倒産してしまいます。さらに、介護サービスの質がご家族の期待値を下回ってしまうと、最悪他の施設へ移動されてしまうことにもつながるので、トップだけではなく職員一人一人に常に危機感があります。また、実績により立場が上がると同時に、上司からの期待も上がるので、責任感も強い職員が多いです。
ですので、金銭的に余裕があって、特養にするか民間の介護施設にするか迷っている方は、
民間の介護施設の方が、より質の高い介護サービスを受けることができるのでおススメです。
特別養護老人ホームの選び方
とは言ったものの、金銭的に民間は厳しいのが現実ですよね。
そこで、より良い特養を選ぶポイントを挙げてみます。
まず、入居前に施設内を見学することができますし、特養には「短期入所生活介護」(ショートステイ)があります。
ですので、ショートステイを活用しながら、色々な特養を体験してから選択するのが良いでしょう。
ただし、空室待ちの状況との兼ね合いもあるため、必ずしもできるとは限らないので、ご容赦下さい。
施設内を見て回れるのであれば、以下の点に注目してみてください。
・職員の髪型や服装、言葉遣いを意識する。
・居室内のベッド周りを確認する。
特養は、教育体制が整っていないことが多いです。
職員の身だしなみや態度まで指導されていれば、教育体制はしっかりしていると判断できます。
また、プライバシーの問題があり、じっくりと見ることは難しいですが、ベッド周りの整理整頓がされていれば、よりきめ細かい介護サービスを提供していると判断することができます。基本的に入居者の介護で大変な施設は、そこまで気が回ることはありません。
施設職員(施設長や生活相談員)との面談の中で確認することも何点かあります。
・往診医は誰で、どのくらいの頻度か?
・洗濯はどのくらいの頻度で行い、乾燥機の使用があるのか?
・食席の配置は、どのような基準で決めているのか?
この点を確認すればある程度みえてきます。
まず、施設職員がこれらの問いかけに応えられない場合、マネジメントが全くできていないので、選択しない方が良いでしょう。
往診医は、特養において非常に重要な役割を担っています。日々の状態観察から、施設で最期を迎えた際の死亡診断書の記載まで担当することになります。ですので、確認しておくべきでしょう。
洗濯に関しては「介護施設に入居させるときって、どんな衣類を選べば良いの?」でも解説をしていますが、乾燥機を使用している施設の場合、乾燥禁止の衣類をなるべく選ばないように配慮する必要があります。職員も気を付けて業務を行っていますが、誤って乾燥してしまい、縮んでしまうことは、どうしても起こってしまいます。
食席の配置は、非常にデリケートな問題です。職員が見守りやすい配置が前提になりますが、その上で入居者の希望がどの程度反映されているか確認してみてください。
以上の点を意識すれば、特養だけではなく、民間においても、より良い施設を見つけられるかと思います。
特別養護老人ホームと地域包括ケア
最後に、特養と地域包括ケアについて記しておきます。
基本的に、ご自宅で順調に生活されている方は、以下の経過をたどることが多いです。
1.介護サービスを受けたいと市区町村の窓口や地域包括支援センターへ相談
2.市の職員による認定調査を経て、介護認定を受ける
3.介護認定の結果を受け、居宅介護支援事業所を選択し、担当のケアマネージャーが決定
4.デイサービスや訪問介護、訪問看護の利用
5.短期入所生活介護の利用
6.特別養護老人ホームへの長期入所
そして、特別養護老人ホームには、居宅介護支援事業所やデイサービスセンターが併設されていることがほとんどです。つまり、3~6は同じ公的施設で完了しますので、家族や利用者の負担は少ないです。
ただ、事業所やケアマネージャーの仕事や態度に不満があれば、変更することはいつでもできますし、別の公的施設の介護サービスを受けたいのであれば、それも可能です。営利団体ではないので、他の施設のサービスを受けることでトラブルになることもほとんどありません。
ですので、デイサービスや訪問介護、短期入所生活介護の中から複数のサービスを受けたうえで、一番満足のいく施設に決めるのがおすすめです。
短期入所生活介護で満足のいく施設であれば、長期入所となっても不満は少ないと思います。
まとめ
特別養護老人ホームと介護付き有料老人ホームなら結局どっちが良いの?
まず、金銭的に余裕のある方は、民間の施設がおすすめです。
完全個室のユニット型ケアによる、きめ細やかなサービスを受けることができます。
また、会社として24時間看護体制の施設を展開している場合は、将来的にはそこへ移動することで、最期まで質の高い介護・看護を受けることができるでしょう。
それ以外の方は特養を選択することになりますが、そのポイントを挙げてみました。
まずは、個室の有無やユニット型(フロア型)の確認をすること。従来型多床室の施設は、利用料は安いですが、介護の質に疑問が多く残ります。そのうえで、職員の質やベッドメイキングなどの細かい場所まで指導されている施設であれば、質の高い介護サービスを受けられるでしょう。
また、地域包括ケアとの結びつきも強く、倒産の心配がほとんどないので安心感もあります。その際、サービスに不満があれば、適宜変更することもできます。
加えて、「保育園」を併設している施設であれば、保育園児とのふれあいの時間もそれなりに確保してもらえます。園児の姿や声は、高齢者を元気付ける一番の良薬だと思っていますので、非常におすすめです。
今回は、以上で終わりたいと思います。
今後も、介護サービスの利用を検討している方の様々な疑問にこたえる記事を書いていきますので、興味のある方はご覧ください。
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