自宅で両親の介護をしている方。
日々、大変な生活をされている中で、
「これから旅行に行くのに、家に親を一人でおいていくのは不安だわ。」
という方は、介護施設への短期入所を利用されるかと思いますし、
「今まで頑張って親のことを介護してきたけど、もう難しいな。」
という方は、介護施設への長期入所を検討し始めるかと思います。
でも、ちょっと待ってください。
「介護施設ってどんなところなの?」
「私の親は、介護施設での生活に慣れるかな?」
「介護施設から、何か文句は言われないかな?」
といった、さまざまな疑問や不安が浮かんでくるかと思います。
今回は、そういった様々な疑問や不安の中から、
「衣類」に関して書いていきたいと思います。
なんで「衣類」なの?
まず、介護施設において、衣類の管理は非常に重要な仕事になります。
理由としては大きく4つあります。
1.衣類にて体温調節をおこなっているため。
2.排泄の失敗(失禁)があった場合は、適宜交換するため。
3.日常の生活動作(ADL)の低下により、着脱することが難しくなっていくため。
4.体重の増減や身体のむくみによる、体形の変化もあるため。
これらについて、解説していきます。
1.衣類にて体温調節をおこなっているため。
ご高齢の方は、体温調節機能が徐々に低下していきます。また、集団生活であるため、ある程度自立している方は居室へ自由に行き来することができますが、それ以外の方は職員の見守りができるよう、食堂やフロアで生活することが多くなります。そのため、空調や加湿も全体を考えた設定となっており、寒がりの方は厚着を、暑がりの方は薄着をして調節する必要があります。
2.排泄の失敗(失禁)があった場合は、適宜交換するため。
ご高齢の方は、尿意や便意が徐々に曖昧になっていくため、失禁をすることも増えていきます。そのため、入居した時は失禁がない方であっても、生活していくうちに失禁が増え、衣類が足りなくなってしまうことがよくあります。
3.日常の生活動作(ADL)の低下により、着脱することが難しくなるため。
ご高齢の方は、徐々に手足の動きが鈍くなっていくこともあります。(拘縮していきます。)
そのため、今までは問題なく着脱することができていた衣類も、徐々に脱ぎ着することが難しくなっていきます。
4.体重の増減や身体のむくみによる、体形の変化もあるため。
ご高齢の方は、体重の増減やむくみの出現により、すぐに体形が変わってしまい、違うサイズの衣類を購入しなければならないこともあります。
介護職員が着脱介助しやすい衣類とは?
では、介護施設にとって、ありがたい衣類は何か、解説していきます。
1.伸縮性のある衣服
2.前開きの肌着
3.ズボンはゴム式で、ジャージやスウェットのもの
4.足首からスネにかけて、ゴムのないももひきや靴下
5.黒や紺以外の靴下
以上5点に留意した衣類を準備していただければ、
ほとんどの介護施設で問題なく生活していただけるかと思います。
1.伸縮性のある衣服
「昔から好きで、よく着ていたの。」といって持ち込まれる衣服に限って、伸縮性がないものが多いです。そのため、入居直後には着ることができていても、徐々に着ることが難しくなっていき、1年後にはタンスの中にしまったままであることが、よくあります。
すべての衣類を一度に新調するのには、金銭の負担が大きいかと思いますので、介護施設を利用する前から、少しずつ伸縮性のある衣類を増やしていくことが望ましいと思います。
2.前開きの肌着
首から被る肌着や衣服は、首回りや両腕を問題なく動かせる方なら問題ありませんが、首回りや腕が動かしにくい方や、片麻痺の方に関しては、前開きの肌着や衣服を選択されるのが良いかと思います。
3.ズボンはゴム式で、ジャージやスウェットのもの
特に、男性の入居者に多いのですが、ボタン式のジーンズやチノパンを持ち込まれることがあります。ですが、ボタン式のズボンは、非常に介助をしにくく、またジーンズやチノパンは乾くのが遅いため、体調を崩された時や失禁が増えてきたときに、不足してしまうことが多々あります。
そのため、ゴム式のジャージやスウェットが望ましいと思います。
ただし、乾燥機を使用している施設に関しては、ジャージを分けて干す必要がありますので、スウェットのズボンを持ち込まれた方がより良いかと思います。
4.足首からスネにかけて、ゴムのないももひきや靴下
高齢の方は、すぐに足がむくんでしまうので、足首にゴムを使っているももひきや靴下は、すぐにきつくなり跡が残ってしまいます。また、ゴムの締め付けにより血行が悪くなってしまい、よりむくんでしまうという悪循環に陥ってしまいます。
そのため、足首からスネにかけて、ゴムのないももひきや靴下を持っていくのが望ましいと思います。
5.黒や紺以外の靴下
介護施設に入居する際は、原則として、持ち物全てに記名をしなければなりません。靴下以外の衣類は、タグに記名したり、記名した布を縫い付けることができますが、靴下はタグが付いておらず、縫い付けることも難しいです。
そのため、黒色や紺色の靴下は記名がなく、他の靴下との違いもほとんどないことから、紛失に繋がりやすいです。ですので、黒色や紺色の靴下は避けた方が望ましいです。
パジャマや他の小物は?
・パジャマに関して
昼夜のメリハリをつけたり、体調を崩された時に着替えることができるため、持ち込まれた方が良いかと思います。伸縮性のあるものを選んでいただければ問題ありません。
・布製のパンツは?
男女問わず、布製のパンツに尿漏れ対策のパッドがついているものがあります。少量の尿漏れはよく起こりますので、普通の布パンツではなく、パッド付きのパンツを選んでください。
・帽子や腹巻、アームウォーマーといった小物類
記名ができるものであれば持ち込んでも問題ありません。ただし、ご本人が着る着ないの選択をすることが難しい場合、あらかじめ施設側に伝えておかないと、タンスの中にしまったままとなってしまいますので、ご家族の要望として伝えてみてください。
・タオル類
記名ができるものであれば問題ありません。ただ、バスタオルに関しては、リースのものを使用していることが多いため、あらかじめ施設側から言及がなければ、持ち込む必要はありません。
お互いの要望に関して
・衣類はいつ交換しているの?
ご家族から頂く衣類に関する要望の中で一番多いのが、「どうしていつも同じ衣服を着ているの?」「なんであの衣服を着せてもらえないの?」といった衣服の選択に関する内容です。
結論から言いますが、ほとんどの介護施設が衣類を交換するタイミングは、失禁したとき、入浴後のみです。ですので、「夜はパジャマを着るんだから、毎朝別の服を着るのが当たり前。」と思っている方は、要望という形で施設側へ伝える必要があります。
また、洗濯が終わった衣類を、そのままタンスの一番上に置いてしまう職員が一定数いるために、同じ衣類のローテーションとなってしまいます。介護職員の教育に関しても、介護施設によって大きな違いがありますので、要望・クレームといった形で伝えないと、なかなか気付いてもらえないのが現実です。
・「衣替えをお願いします。」
介護施設からの要望で一番多いのは、衣替えの衣類を持ってきてほしいということです。
おおよそ6月と11月に衣替えをすることが多いので、その前の月にはもっていくのが良いでしょう。
その際、縮んだり汚れたりして新調する衣類はないかの確認も合わせて行うと、手間が減るかと思います。
特に、「前開きの肌着や衣服を購入してください。」という連絡は、遅かれ早かれ確実に来ますので、意識しておいた方が良いでしょう。
まとめ
・伸縮性のある衣服
・前開きの肌着
・ゴム製のジャージ、スウェットのズボン
・ゴムのないももひきや靴下
・黒色や紺色以外の靴下
これらに留意した衣類選びをすれば、問題なく生活していくことができると思います。
また、最低限必要な枚数に関してもまとめておきます。
・羽織もの(カーディガン等) 2~3着
・上衣(Tシャツ等) 3~5着
・ズボン 4~6着
・肌着、ももひき 4~6着
・靴下 3~5着
・パジャマ 2~3着
以上の着数を夏用、冬用の2パターン準備すれば、問題なく生活していけるでしょう。
また、サイズが分からないこともあるかと思います。その場合は大きめのサイズの衣類を購入してください。
その他、ひざ掛けの準備があると、なお良いかと思います。
決して高額な衣類は必要ありません。某大型衣服店では、介護用のコーナーがありますので、そこで販売されているもので十分だと思います。
今回は、以上で終わりたいと思います。
今後も、介護サービスの利用を検討している方の様々な疑問にこたえる記事を書いていきますので、興味のある方はご覧ください。
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