末期がんと介護保険制度

FP

今回は、末期がんと介護保険制度ということで、重たい話題になりますが、知らない方も多くいると思いますので、書いていきます。

ちなみに、末期がんは特定疾病に含まれます。
ただし、定義がやや曖昧です。基本的にはステージ4で転移が認められた状態のことを指しますが、医師の診断によってはステージ3でも末期がんとなることがあります。
また、この記事では末期がんを取り扱いますが、他の特定疾病でも同じように介護保険制度を活用することができます。

特定疾病は以下の16種類になります。

・末期がん
・関節リウマチ
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・後縦靭帯骨化症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・認知症
・パーキンソン病関連疾患
・脊髄小脳変性症(SCD)

・脊柱管狭窄症
・早老症
・多系統萎縮症(MSA)
・糖尿病関連疾患
・脳血管疾患
・閉鎖性動脈硬化症
・慢性閉塞性肺疾患
・変形性関節症

それでは、介護歴10年以上の介護福祉士であり、ファイナンシャルプランニング技能士2級の筆者が実体験を交えながら解説していきます。

特定疾病と介護保険制度

まずは、介護保険制度の概要ですが、65歳以上の方は、市区町村の窓口や地域包括支援センターに行き、介護認定を受けた後で介護保険制度を利用することができます。

一方、40歳以上65歳未満の方は、特定疾病に罹患した場合に、介護認定を受けた後で介護保険制度を利用することができます。

しかし、末期がんとはステージ4で、他の臓器への転移が認められた状態です。介護認定の結果を待っている時間などありません。

したがって、他の認定待ちの方より、優先的に介護認定を受けることができ、認定調査を行った日から介護保険制度を利用することができます。

なぜ末期がんの方が介護保険制度を利用するのか?

末期がんは、基本的には治る可能性が低く、徐々に本人の状態も低下していきます。そのため、介護ベッドや杖、車いすの準備あるいは自宅のリフォームを早急に行い、環境を整備しなければなりません。
また、ケアプランの作成や訪問介護、訪問看護、往診医を利用することもできます。

ただし、特定疾病に該当する方が訪問看護や往診を受ける際は、介護保険ではなく医療保険の適用になる点には注意してください。

特定疾病の訪問看護は、医療行為が多くなるからです。

ですので、末期がんの診断を受けたら速やかに介護認定を受けることを考えてくださいね。

また、40歳未満の方には、介護保険の適用はありませんので注意してくださいね。

お金に関する手続き

がんの診断を受けると、多額の金銭を必要とします。
そのぶん、国や保険会社からの補助や給付金、貸付制度が充実しています。
しかし、手続きが複雑なケースがよくあります。
ですので、これから主要な制度を説明していきます。

・本人の事業主への連絡、傷病手当金の申請
・高額療養費制度の活用(事前に手続きをするのであれば限度額適用認定証の申請)
・医療費控除の申請
・家族が介護をするために仕事を休んだ場合…介護休業給付金の申請
・仮に失業してしまった場合…失業給付の申請
・がん保険に加入している…保険金の受け取り手続き

実体験を交えて、くわしく解説します。

・傷病手当金の申請

本人が所属している事業主に連絡すると、傷病手当金の申請書類を渡されるので、記入して提出すれば大丈夫です。ちなみに、傷病手当金は、病気を理由として3日以上連続して休んだ場合、4日目から支給されます。金額は、標準報酬月額(4月~6月の給与の平均)の2/3です。

実際は、毎月申請書を事業主に提出して、それを事業主が健康保険組合に提出し、健康保険組合から手当金が事業主に支給されてから、事業主より口座に振り込まれるので、手元に来るのは約2ヶ月後になります。ちなみに、支給日は毎月10日、20日、末日のいずれかです。また、申請書には医師の記入欄もあるので、県外の病院で治療している場合は、受診時に持っていく等工夫して下さいね。

毎月申請しなければならないので、大変ですね。

・高額療養費制度の活用

高額療養費制度とは、1ヵ月の医療費が高額になった場合に一定額を払い戻してもらえる制度です。
手続きは、事前・事後と2種類あります。

事前に手続き…本人が加入している保険組合に申請し、限度額適用認定証を受け取ると、支払い時点で自己負担限度額となる。
事後に手続き…全額自己負担した後で、本人が加入している保険組合に申請して、超過分を受け取る。申請の期間は、治療を受けた翌月から2年間です。

実際は、毎月1日~末日でカウントされるので、月をまたいで入院した場合はそれぞれの月で処理されてしまうため、月あたりの支払額が少なくなってしまい、高額療養費制度の対象にならないこともあります。入院、治療のタイミングなので仕方ありませんが、理不尽な制度ですね。また、保険外診療や先進医療は対象外となっているため、これから受けるがん治療が高額療養費制度の対象になるのかどうかも、医師に確認する必要があります。そのため、がん治療に関しては、事前申請をして限度額適用認定証を受け取るケースはほとんどありませんし、傷病手当金同様、事後申請の場合は、手元に来るのは申請してから2~3ヵ月後になります。そのため、「まとめ」にて貸付制度にも触れていますので、確認してみて下さい。

同じ10日間の入院でも、6/15~6/24と6/25~7/4では、全く違うってことですね。

・医療費控除の申請

年間の医療費が10万円を超えた場合、確定申告をすることで、所得・住民税を一部控除できるものです。確定申告は、翌年の2/16~3/15に、対象のレシートを全て持って、管轄の税務署にて書類を書けば大丈夫です。また、世帯合算なので、がん治療中の本人以外の医療費も、同世帯ならば合算できます。

実際は、通院以外に買うものが多かったりして、レシートがかなり溜まってしまい、どれが医療費のものかわからなくなってしまいますので、医療費のレシートは別でまとめておくと良いでしょう。また、高額療養費制度とは全く別の制度なので、重複することも可能です。その場合は、高額療養費制度を使った後の自己負担額を合算して、年間の医療費を算出することになります。

・介護休業給付金の申請

これは、本人を介護する側になります。本人が介護認定を受けていれば取得可能で、通院の付き添いや買い物なども対象になります。ただし、条件が多くあるので注意してください。
まず、介護休業と介護休暇の違いを説明します。

介護休業…要介護者を介護する場合に取得。正規、非正規は関係ないが、日雇いは取得できない。
介護休暇…1時間から取得できるが、給付金等はなし。

次に、給付金を受け取れる条件になります。

・介護休業開始日以前の2年間に11日以上就業した月が12ヵ月以上あること。
・雇用期間が1年以上であること。
・介護休業中の月の就業日数が10日以下であること。
・介護休業中の月々の賃金が、休業前の賃金の80%未満であること。
・非正規社員は、給付金を受け取った後も、6ヵ月以上就労すること。

これらの条件を満たした場合、介護休業が開始となります。(休業期間は最長で93日です。)
そして、介護休業が終了した翌日より2ヵ月後の末日までに事業主へ申請します。
金額は、おおまかに計算すると、「給与(日額)×休業日数×67%」になります。

・失業給付の申請

傷病手当金の受給となる場合がほとんどだと思うので、割愛します。
仮に失業となった場合は、事業主より書類をもらい、記入することになります。

・がん保険加入者は保険金の受取り
加入しているがん保険により異なるので、割愛します。
ステージに関わらず、がんの診断を受けたら保険会社に連絡しましょう。

まとめ

末期がんの診断を受けたら、まずは介護認定を受ける手続きをしましょう。
他の認定待ちの方より優先的に介護認定を受けられ、認定調査を行った日から介護保険制度を利用することができます。

次に、お金に関する手続きになります。

・傷病手当金の申請…事業主に申請します。給与の2/3を最長1年半受け取ることができます。
・高額療養費制度の活用…1ヵ月あたりの医療費が高額になった場合、一定額を払い戻してもらえます。
・医療費控除の申請…年間の医療費が10万円を超えた場合、所得・住民税を一部控除できます。
・介護休業給付…給与の2/3を最長93日分受け取ることができます。
・失業給付の申請…仮に失業してしまった場合は、申請しましょう。
・がん保険の保険金の受取り…加入しているがん保険の種類によりますので、保険会社に連絡しましょう。

最後に、貸付制度にも触れておきます。
・高額医療費貸付制度…高額療養費制度の事後申請となる際、一時的に多額の支払いが生じます。その支払いに充てられる貸付制度になりますので、健康保険組合に連絡してください。なお、無利子ですが、高額療養費の支給見込み額の8割までしか借入れできない点には注意してください。

いかがだったでしょうか?
急に末期がんの診断を受けると、どうすれば良いのか分からなくなってしまいます。
そんなときはこの記事を読んでもらえれば、力になるかと思います。
これからも、病気や介護、お金に関する記事を書いていきますので、良かったらご覧ください。

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